恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
「いちいち一から十まで説明しないと動けないのか?」
「あ、でも……ハサミ借りるだけだし、お邪魔しちゃっても悪いかと思って」
「別に見られて困るもんもないし、いいよ上がって」
ぶっきらぼうに言われて、本当に上がっていいのか迷ったけれど、これ以上ここに立っていてもまた怒られてしまう気がして恐る恐るお邪魔する事にする。
お邪魔しますと言ったけれど、和泉くんはハサミを探してくれているのか返事はなかった。
私の知っている和泉くんは、明るくて優しくて気さくな人だった。
だから、再会してから今までの和泉くんは、和泉くんであって和泉くんではないような、不思議な感じがする。
今日、何かあって機嫌が悪いのか。
それとも変わってしまったのか。
五年という歳月の重さは分かっているつもりだし、私だって高校の時とは違うけれど、変わってしまった和泉くんがなんだか悲しかった。
「……この部屋って2LDK?」
あまりに広さに驚きながら確認すると、和泉くんが、そう、とだけ簡潔に答える。