恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
傷ついてると思って気を遣わなくていい。
そう言ったけれど、和泉くんは別にそういうつもりじゃないと言った。
その優しさに困りながらも嬉しくて。
どういう顔でいればいいのか分からずにいると、和泉くんの視線に気づいた。
「そういえば、名前。ごめん」
「名前? 何が?」
「さっき、莉子って呼び捨てにしただろ」
ああ、そういえば最初に会話に入ってきた時、確かに私を莉子って呼んでたっけと思い出しながら、和泉くんを見上げた。
そして、なるべく軽いトーンを意識して聞いた。
「もう、名前じゃ呼んでくれないの?
ずっと大野のまま?」
顔色を窺うように、じっと和泉くんを見つめる。
迷惑そうだったらすぐに冗談だって笑おう、そう決めて。
昔みたいに莉子って呼んで欲しいなんていうのは私のわがままだから、そんな事で和泉くんを困らせるつもりはなかった。
ただ、なんとなく大野って呼んでるだけなら莉子に変えてくれないかなって、そしたら嬉しいなって思っただけで。