恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―


「カウンターでひとりでアルコールゼロのカクテル一杯飲んでたけど、あいつら声がでかいから全部会話が聞こえてきて不快だった。
店側も迷惑そうだったし」
「そうだったんだ……」
「大野の事悪く言ってたのはずっと女の方で、男は黙って聞いてるだけだった。
その時の会話だけで判断すれば、大野に未練が残ってるんじゃないかって女が男を疑ってる感じだった」
「そうなんだ……。ああ、だから坂下さん、私にラブラブっぷりをアピールしたかったのかな」
「それにしても迷惑な話だ。
何も悪い事してない大野をなんでそこまで痛めつけようと思うのか理解できない。
一昨日の岩上も今日の女も、なんで何もしてない大野を前にあんなに毒づくのか不思議だ」

本当に嫌そうに言った和泉くんに、「シンデレラパワーかな」と笑うと、笑ってる場合じゃないと怒られる。
確かにそれはその通りで、さっきまで泣きそうだったのも本当なのだけど。

和泉くんが怒ってくれて助けてくれたから。
もう嫌な気持ちはどこかに消えていた。

本当に私の心は単純にできている。

私を怒った和泉くんは、はぁとため息をついてから続ける。

「その前に、俺には大野を振ってまでしてあの女を選ぶ男の気持ちもまったく理解できないけど」


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