恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―


「私が嫌いとかじゃないの……?」
「さっきも言ったけど、好きだよ。
莉子が俺をどう思っていようが、俺は莉子が好きだ」
「私も好きだって何度も言って……」
「俺は、おまえが思ってる男じゃない」

かぶさるように言われた言葉の意味が分からなかった。

それを分かってか、和泉くんはもう一度分かりやすいように言ってくれたけれど……。
それを聞いてますます分からなくなった。

「俺は、和泉孝広じゃない。
和泉孝広の従兄妹の、和泉奏一なんだ」

瞬時に理解する事は難しくて、しばらく黙ってしまった。
だって、そんな急に和泉孝広じゃなくて和泉奏一だなんて言われたってそんなすぐに順応できない。

第一、それが本当なのかも信じられない状態だった。

「え……だって、似てるよ、顔」
「従兄妹だし、孝広とは昔からよく似てるって言われて育ってきた」
「それに……ほら、ポストの名前だって和泉だったし」
「それも従兄妹だから。同じ苗字でも何も不思議じゃないだろ」
「でも……」

そのまま黙った私を、和泉くんはしばらく待っていてくれたけど、あまりに長い沈黙だったからか、優しい声で「でも?」と先を促す。

声も私を見つめる瞳も優しくて……ますます声が出なくなってしまう。



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