恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
◇ふたりめの王子様
とりあえず今すぐ出てこいって言った佐和ちゃんが、待ち合わせ場所に駅を指定して電話を切る。
無理やり通話終了状態にされた電話に、耳から離した携帯をぼんやり眺めていたところで、隣からの視線に気づいた。
「佐和ちゃんからだった……。
ほら、高校の時同じクラスだった佐和ちゃん。
和泉くんも覚えてるでしょ……?」
そうであって欲しいと思いながら聞いたけれど……。
和泉くんは頷きはせずに、申し訳なさそうに微笑むだけだった。
その表情に、諭された気分になって……胸がぎゅっと掴まれたみたいに苦しくなる。
和泉くんは、本当に和泉くんじゃないんだって……そう言われた気分になった。
「私、ちょっと出てきてもいい?
佐和ちゃんが今……和泉くんと一緒にいるからすぐこいって」
恐る恐る言うと、和泉くんは少し驚いた顔をした後、もちろんと微笑む。
「夜から雨が降るらしいから、遅くなるようなら傘持って行った方がいい。
あまりひどいようなら迎えに行くから連絡しろ」
いつも通りのトーンでそう言う和泉くんが玄関まで来てくれる。
靴を履いたところで振り向くと、優しく微笑まれた。