恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―


「夕飯の事は気にしないで、ゆっくり行ってきていいから」
「……ありがとう」

たった五文字言うだけで、泣きそうになるくらい苦しかった。
頭が混乱したままで、何で泣きそうになったのかも分からないけど……こみ上げてくるたくさんの感情が溢れそうになる。

信じていたものを嘘だって言われて、何を信じればいいのか何が本当なのかも、よく分からない。

それでも、和泉くんを……この人を、好きだって事だけは本当だと思うのに。
和泉くんが、それは私の勘違いだと私の気持ちごと否定するから……どうすればいいのか分からない。

本当に和泉くんじゃないの……?

和泉くんは目の前にいるのに、それを嘘だなんて言われても頭がついていかない。
……ううん。和泉くんの言葉や佐和ちゃんからの電話の内容で、本当はどういう事なのか分かってはいる。

いるけど……。

「もし……もしも、和泉くんとか佐和ちゃんの話が本当だったら。
私は和泉くんをなんて呼べばいいの?」

間の抜けた質問にとられたのか、和泉くんは拍子抜けしたみたいでわずかに笑ってから「どうとでも」と答えた。

「奏一……って言ってたよね」
「……ああ」
「奏一くんと……奏ちゃんだったら?」
「前者。……莉子、俺の事はもういいから。
孝広が待ってるんだろ、早く会った方がいい」

そう優しく言う和泉くん……奏一くんに言われるまま家を出た。
アドバイスされた通り、傘を持って。


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