恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―


「孝広は男の俺から見てもいいヤツだと思う」
「……だから、和泉くんと付き合った方がいいって事を言いたいの?
奏一くんが好きだって言ってるのにこの期に及んでまだそんな事言うの?」

もういい加減私の気持ちを分かって欲しいと思って顔をしかめると、奏一くんに笑われる。

「違うよ。孝広はいいヤツだから、莉子じゃなくても他の女が放っておかないだろうし、また次の恋愛ができるって話。
だけど俺みたいなヤツを好きだって言ってついてきてくれるヤツは多分、莉子くらいしかいない。
だから、莉子は俺の隣にいればいいっていうのは俺のわがままじゃなく正論だって言いたかっただけ」

その言い回しがあまりに奏一くんらしくて思わず笑ってしまった。

「奏一くんだってモテるし、その気になれば簡単に彼女をとっかえひっかえできるよ。
だけど、それだと奏一くんの性格からして疲れるだけだし、やっぱり私ひとりにしておいた方がいいっていうのは正論だと思う」

同じように言った私を奏一くんが笑って「正論だな」と同意した。

奏一くんが寝室から持ってきた毛布を和泉くんにかける。
その間に私はテーブルの上に散らかったおつまみやグラスをトレイにまとめて片付ける。


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