恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
おつまみはほとんど和泉くんが買ってきてくれたけど、何品かは作ったから、それに使っていたお皿とグラスをシンクに置いて水をためる。
水の音で和泉くんが起きちゃうか心配にもなったけれど、見ると口を開けて完全に寝入っていたから、なるべく静かにを心掛けて洗ってしまう事にした。
半分以上残っている日本酒の瓶を持った奏一くんがキッチンに入ってきて、冷蔵庫を開ける。
そして、それを中に納めてから「そういえば」と話しかけてきた。
手に泡をつけたまま、水だけ止めて振り向くと、いつの間にか奏一くんが隣に立って私を見ていた。
「孝広にキスされた事、怒る権利もないと思って怒らなかったけど……正直に言えば面白くない。
莉子が悪いとも思わないけど、これからは自分でも気を付けろ」
急な話題で驚いたけど、そんな驚きは次の瞬間に襲ってきた嬉しさに飲み込まれて姿を消す。
「なに笑ってるんだよ。注意してるのに」
「だって、やきもちが嬉しかったから」
「俺は面白くない」
そう主張した奏一くんが、おもむろに私の肩を抱く。
そのまま見上げていると、近づいてきた奏一くんの唇が私のと重なった。