恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
数秒間そうして離れていこうとする奏一くんに、思わず、もうおしまい?と聞くと、困ったような微笑みを返された。
そして、小さな声で「おまえは……」と呆れ気味に言いながらもう一度私に近づく。
唇を合わせるだけだったキスがじょじょに深まり、唇をゆっくりとこじ開けようとする奏一くんに応えると、入り込んできた舌に咥内をなぞられる。
舌が重なって体温が溶けって、どっちがどっちか分からなくなる。
夢中になりながらも泡のついたままの手が気になって、奏一くんを抱き締められないのがじれったい。
だから、とりあえず食器洗いを済ませて和泉くんが起きて帰っていってから思いっきりいちゃつこう。
そんな魂胆を頭の隅で浮かべながらキスに浸っていると、背中に回っていた奏一くんの手が身体のラインをなぞりながら下りていっている事に気づいた。
背中から腰、そして……。
驚いて身体をすくませた私に奏一くんはキスを一度中断させて、「おまえがもっとって言ったんだろ」とだけ言ってまた口づける。
そうだけど、確かに頭の中では後でそうしたいなとか考えていた事は認めるけど、だけど違う!
手が泡泡なのはもうこの際いいとして、リビングでは和泉くんが寝てる。大問題だ。
だけど、奏一くんは私が泡のついている手を気にして止められないのが分かっているようで、キスで言葉の抵抗を塞ぎながらも手を止めてはくれない。