恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
考えてみれば、まぁ確かにそれもそうなのかと思ってしまう。
だけど童話だし、そんな事を言ってしまえば元も子もないとも思うのだけど、和泉くんがあまりに正論みたいに言うから変に納得してしまった。
「そういえば、シンデレラって靴をわざと落としてったって話もあるよね。
私は想像力ないから物語の文章のまま、たまたま脱げちゃっただけかと思ってたけど」
「今の女は、みんなわざと落とせるヤツばっかりだからそういう解釈が広まってるんだろ
おまえから彼氏とった女も、わざと部屋にピアス置いて行ったんだろ、どうせ」
「……そうなのかな」
「おまえもわざと落とせるくらい図太くならないと、次仕事決まっても同じ事になると思うけど」
「それは……否定できないかも」
女として女の世界で生きていく以上、どうにもできない壁だから。
「でもそれだけみんな王子様を探すのに必死なのかもね」と苦笑いした私に、和泉くんは何かを思い出したのか急に立ち上がってリビング奥の部屋に入る。
そして、すぐに戻ってくると私にストラップを差し出した。
橋の上で落としたものだ。