恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
「おまえ、あの後すぐ泣き出したから渡しそびれてスーツのポケットに入ったままだった。
シンデレラで思い出した」
「ああ……ありがとう」
「ガラスの靴だろ、それ」
「うん。でも……」
持っていても意味がなくなっちゃったけどね。
そんな風に続けようとして、やめた。
拾ってくれた和泉くんに失礼だし、本来の希望は儚く散ってしまったけれど、和泉くんが拾ってくれたっていうオプションつきのストラップとすれば悪くない。
形も気に入っていたし。
第一、私が買ったモノだし、それを彼と別れたからってどうにか処分する必要もない。
「ああ、チェーンが切れてるからか」
私が、でも……と声にしたまま黙り込んだからか。
その理由をストラップの故障のせいだと勘違いした和泉くんが、私からストラップを取り上げる。
そして細さを確認するとまた部屋に消えていって、今度は数分後に戻ってきた。
「ストラップとしてはもう無理だけど、キーホルダーとしてなら使えるだろ」
そう言って差し出したのは、チェーン部分を変えたガラスの靴だった。
元のチェーンを繋いでくれたわけじゃないから、和泉くんの持っていた何かしらのチェーンをつけてくれたって事になる。