恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
「え、悪いよ。何か壊してこれにつけてくれたの?」
「チェーンだけ持ってたんだよ。この部屋の鍵に元々ついてたヤツだけど、使わないから外したんだ。
それが余ってたから。丁度いいだろ」
「……いいの? もらっても」
「俺はいらないものだから」
「ありがとう……。大切にするね!」
嬉しくなって笑顔でお礼を言うと、和泉くんは少し困ったような顔をしてから真顔に戻って「別に」と呟いた。
手元に戻ってきたガラスの靴がキラキラして見えるのは、オシャレな照明のせいなのか、真新しいチェーンのせいなのか、それとも和泉くんが直してくれたっていう付加価値のせいなのか。
多分全部だなと思いながら嬉しくてガラスの靴を見つめていると、そんな私を見かねてか、和泉くんが「話を戻すけど」と話しかけた。
「おまえの自己犠牲主義っていつから?」
見る限り、今の和泉くんは無愛想というか無関心な感じだし、言葉もぶっきらぼうではあるけれど、口数が少ないわけではないと思う。
どうでもいいって思われていそうだけど、私の事を少しでも気にもかけてくれてるみたいで、それが嬉しかった。
例え、和泉くんにとっては沈黙の気まずい空気を免れるための暇つぶしだとしても。