恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―


「いつからかはちょっと分からないけど……。
うち、お兄ちゃんが病気がちで入院してる時が多かったの。だから両親が家にいない事が多くて、小さい頃からあまり甘えたりする時間がなくて」

もしかしたらその関係かも、と答えると、和泉くんに家族構成を聞かれる。

高校の時、結構色々話した気でいたけれど、和泉くんが聞いてくるって事は、もしかしたら家族の事に触れた事ってなかったのかもしれない。

「両親とお兄ちゃんと私の四人だよ」
「兄貴の入院って大野が小さい頃から?」
「うん。留守番したりするようになったのは幼稚園とか、それぐらいだったと思う。
でも、お兄ちゃんも今は抵抗力も強くなったし、頻繁に入院するわけじゃないから、通院は欠かせないけど日常生活を送れてるよ」
「ふーん」
「入院している間はお母さんもお兄ちゃんにつきっきりだったし、お父さんは仕事で帰りが遅くて……。
そんな状態が寂しいと思った事は何度もあったけど、困らせるだけなのは分かってたし」
「だから言わなかったのか」
「一度ね、もっと一緒に遊びたいとか言ってすごく怒られた事があったから。
お兄ちゃんは病院にしかいられないのに、自分ばかりわがまま言うんじゃないって。
だからそれから言わなくなった」


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