恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
五年前は制服だった服をスーツに着替えた和泉くんは、昔と同じくらいかそれ以上にカッコよく、今でもモテるんだろうなぁと簡単に想像がつくほど。
高校の時は少し染めていた髪も今は黒で、大人になったんだなとしみじみ思う。
そういえば、背も少し高くなったような気がする。
高校一年生の時は、私より数センチ高いくらいだったのに、今は多分175くらいはありそうだ。
すらっと長い手足を余すようにベンチに腰掛ける和泉くんは少し細身の体型に見えた。
スーツも多分細身のやつだ。
確か和泉くんのおうちは会社を経営していたんだっけ。
だからか、着ているスーツも履いている靴も、持っている鞄も、すべてが高級そうに見える。
私の着ているような安物とは大違いだ。
中の人間性の問題かもしれないけれど。
「和泉くんは……今、何してるの?」
「普通の会社員。そっちは?」
「私は……派遣かな」
クビになったとは言えずに曖昧にそれだけ答えると、和泉くんは、ふぅんとだけ呟いた。
派遣の仕事内容まで聞かれなくて安心もしたけれど、同時に興味を持たれていない事が分かって落ち込んでしまう。
久しぶりに会って興味を持てって方がおかしいのかもしれないけれど。