恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
「ごめんね、五年ぶりに会ったのに急に泣き出したりして……。元気だった?」
「五年ぶり?」
「五年ぶりだよ。高二の時以来だもん」
和泉くんがじっと見つめてくるから、目を逸らしながら言う。
主に不安を主材料とした色んな感情が溢れ出して泣いてたから、今までは気にしている余裕もなかったけど……。
今更ながらドキドキする。
好きだった和泉くんとこんな風に再会できるなんて夢にも思ってなかったし、あまりに急だったから。
チラっと見ると、視線を少し重ねた後、和泉くんがようやく私から目を逸らしてくれてホっとする。
ベンチに浅く腰掛けて背もたれに寄りかかる和泉くんを、そのまま盗み見していて……ドキドキする鼓動が懐かしさを運んできた。
高校生の頃、帰る途中にある公園で、こんな風にベンチにふたり並んで色々話した。
あの時も私は今みたいに、隣で笑う和泉くんをこっそり見つめてドキドキしていたんだっけ。
他の女子よりも話す時間が長い事は分かっていたから、その事実に、和泉くんの笑顔に。少しだけ期待を募らせながら片思いしてたんだっけ。
そして今もこうして、あの時と同じように並んで話せているんだから不思議だ。
運命だなんて言葉は苦手だけど、こんな風に再会してしまうと、その類のものをちょっと信じてしまいそうになる。