いとしいあなたに幸福を
「…悠梨はあのとき、俺のせいで君が泣いてるって言ったんだ。その理由を……訊いてもいいか?」

瞬間、愛梨はびくりと身動ぎした。

「嫌なら構わないよ」

「ううん……違うんです、あれは…お兄ちゃんが早とちりしちゃって」

「早とちり?」

「…わたし、周さんと都様が大好きです。お二人共、身分なんて関係なく気さくに接して下さって、とても優しいから」

そう言った愛梨は、笑っているのに何故だか少し寂しそうに見えた。

「だから…そのお二人に赤ちゃんが出来たって聞いたら嬉しくて、それでちょっと泣いちゃったんです。それをお兄ちゃんが勘違いしてしまって」

いつもなら真っ直ぐに眼を見て話をしてくれるのに、伏し目がちに話すのは先日怯えさせてしまったせいか。

「そ…うか、そうなんだ。有難うな、愛ちゃん」

――もしかしたら、なんて、少しだけ期待していた。

せめて君が俺のことを好きでいてくれれば、なんて都合のいい淡い期待を抱いていた。

嫌われればいい、だなんて陽司には言った癖に。

「都も君のことが好きみたいだ。また都の体調が良くなったら話し相手でもしてやってくれるか」

「…はい。わたしもお二人の赤ちゃんに、早く逢いたいです」

もしそんな胸中を知られたら、純粋に兄の友人として俺を慕ってくれている君は、俺を何と思うだろうか――


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