いとしいあなたに幸福を
「愛梨、周のことが心配なのか?」

悠梨の問い掛けに、妹はこくんと頷いた。

「そうだな…うん、俺も心配だよ。あいつ、凄くいい奴だからな」

自分と妹の命を救ってくれただけではなく、人攫いたちの手からも守ってくれた。

果たして、受けた恩を返すだけのことが自分に出来るだろうか。

「――ところで悠梨くん。君、力仕事とか得意?」

「?まあ、年相応には」

唐突に振られた陽司の問いに、悠梨は狼狽しつつ返答した。

「本当かい?確かに周様より背は高いけど線が細いから少し心配だったんだ。それから愛梨ちゃんは、掃除とかお洗濯とか好きかな?」

「はいっ」

その問い掛けに、愛梨は大きく頷いて見せた。

「陽司さん、自慢じゃないけどうちの妹は家事全般なら一通りこなせるよ」

辺境の集落で暮らす娘は、家事全般くらい出来て当然だと言われている。

愛梨はいつも母の家事を率先して手伝っていたし、器用なため新しいことの覚えも早かった。

「そうか、なら良かったよ。そんな君たちに周様から一つ提案があるんだ。勿論、強制ではないけど」

「俺と、愛梨に…?」





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