【短編集】あいとしあわせを祈るうた
ふう、と気弱にため息をつく杉本君の肩を私は、ばしんっ!と引っ叩いた。
あ。これ、美紀と同じおばはん癖。
「無理じゃないわよ!
杉本君なら私、全面協力するから!
頑張ってよ!」
いつのまにか、私は杉本君の右手を両手で包み込み、ブンブンと振り回していた。
「じゃあね。杉本君。
楽しいクリスマスありがとう。
良いお年を!
椅子、上手く出来るといいね」
「さやかさんも良いお年を。
彼氏さんと仲良くして下さいね」
駅のホームで電車に乗る私に、杉本君はいつまでも手を振ってくれた。
私もいつまでも手を振り返す。
胸にクマを抱っこしながら。
なんだか、嬉しくって涙が出そうだった。
家具作りが特技で。
聞き上手で。
ゲームがうまくて。
何より年上の女を安心させてくれる。
こんな子、将来絶対有望だと思う。
美紀には、杉本君すごくお似合いだ。
私が知る限り、彼女の恋愛遍歴に、年下の男は記録されていないと思うけど。
是非、新境地を開いて頂きたい。
そして、来年のクリスマス・イブは彼と一緒に過ごして欲しいな。
『…美紀さんのギャップがたまらないんです、俺。
仕事では厳しい面もあるけど。
残業している時、さりげなく温かいコーヒーを机に置いてくれて、お疲れ様って、笑顔で言ってくれるのに、グッときちゃって…』
冷たい夜風に髪をなびかせながら、
杉本君はそう言った。
窓から見るネオンの街。
遠ざかってゆく街にはあの歌がまた流れる。
愛と幸せを祈る歌。
So this is Xmas…