『イロモノなアタシⅡ 小鬼更正計画』
そりゃ、万里也や秀一郎はワガママだし、しょっちゅう困らされているけれど、担当になった以上は一流の芸人になって欲しいと思う。


きっと木村専務は、あえて期待をしているあたしに試練を与え、彼らと共に成長させようとしてくれたんだ。


まあ、かなり厳しい試練ですが。


「この事、敬タンに話したの? 」
「話してない、忙しいのに余計な心配をかけたくないから」
「志穂ちゃん……芸人さんの女房に向いてるわね」
「まあね、だから結婚するのが怖いっていうのもあるけど」


金魚師匠の奥さんを1年間見ていたけど、大変そうだった。


常に父親不在の家の中で子供の行事や近所の行事をこなしたり、家に訪れる後輩芸人にお小遣いを与えたり、浮気の後始末にと、愛人宅へ慰謝料を持って行ったり……。


辛い事も何もかも全部自分の中で始末して、たまに帰宅する師匠を笑顔で出迎える彼女を見ていたから、敬介の奥さんになるのが怖い。


まあ、彼の事だから愛人宅に慰謝料を持って行くなんて事態にはならないだろうけども。

< 145 / 292 >

この作品をシェア

pagetop