『イロモノなアタシⅡ 小鬼更正計画』
それでも、ちょっとした悩み事すら話せないのは辛いと思う。


「敬タンなら大丈夫よ、安心しなさい」
「でも今は、暮れのMANZAIーGPに向けて頑張らなきゃいけない時だから」


売れていてなおかつ面白い芸人さんは、最初から参戦しなくてもいい。


シード権が与えられ、上位決定戦から入れるのだ。


コント主体のマージナルが漫才を始めたのはごく最近だし、上位決定戦へのシード権を獲得するためには、もう少し頑張らなくてはいけない。


ネタ帳を車の中でも広げ、何かを書き込んでいる姿を見た以上、お父さんが倒れた事で彼に心配を掛けるのはNGだ。



「晃とは何でも話せたわ、私」
「まあね、お母さんは優しかったし」
「そういう夫婦の子だから、自分もそうなりたいって思うのね」
「うん」


お母さんの事を思い出したらしく、目頭をこするお父さん。


「退院したらお墓参りに行かなくちゃ、浮気してごめんなさいって」


もう何度目だよ、それ。



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