『イロモノなアタシⅡ 小鬼更正計画』
結局誰にも挨拶をしないため、代わりに挨拶回りをあたしがしてから収録が始まった。


2人はひな壇に座らされて、司会の桧 枝葉師匠の紹介を待ったが、いつまで経ってもフリが来ない。


当然だろう、枝葉師匠は礼儀にうるさい人。


例え同期の息子であっても、挨拶に来ない芸人には厳しいのだ。


万里也は、なかなか呼び出されない事にイライラし始めている。


その証拠に、ガムを噛み始めた。


キラリと枝葉師匠の細い目が光り、嫌な空気が流れる。


「誰や、ガム噛んでる奴は」


収録を一時ストップさせて、2人に近寄る師匠。


よしよし、ここで2人の天狗っパナをポキーッとへし折って下さい。


「自分です」


素直に手を上げるし、万里也ったら。


やっぱり師匠の迫力に負けたのか?


「早よ、ほかっとき」
「はいはい」


アウトー、『はい』は1回だよ。


「ナメとんのかワシを? お前は」
「そんな事ありまへん」「楽屋に本人が挨拶に来とらんし、ガムなんど噛みよって」


来た来たキター!


師匠、もっと言って!
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