『イロモノなアタシⅡ 小鬼更正計画』
翌週の水曜日、敬介がやって来た。


今日のデートは、心斎橋にあるハギモト直営の若手芸人の劇場『アッハ心斎橋』。


ここは、無料で無名の新人を集めて芸を見せる場所だった。


以前、敬介は余りお笑いに関しての熱意を持っていなかったけれど、最近、大阪に来る事が多くなったせいか、芸人としての意識が高まったようで、デートの時にハギモトの劇場で喜劇を見る事が多くなっている。


劇場前に到着すると、学校帰りの女の子達が群がっていた。


敬介は気づかれないように、帽子を深くかぶり、サングラスを直す。


「もうちょっと背が低ければ、女装しても良かったかもね」
「女装はコントだけでたくさんだよ、俺、変に似合うし」


確かにTVで女装させられている敬介は、美人。


他の芸人さん達も、


『これじゃコントにならないだろ』


と、文句を言う位。


「じゃあ、行こうか? 」


仕事帰りでスーツ姿のあたしと敬介、いかにもマネージャーらしくしないと、周囲にバレたら大変だ。


劇場の一番後ろで立ち見をしていると、舞台の上では名前も知らない新人さん達が暴れている。


まーちゃ子も、2年前まではこうだった。


でも、放送禁止ネタが受けて、何とか営業の仕事がもらえるようになり、いざ東京! という時に失敗をしてしまったから……。


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