克服ブラックベリー
教室のドアの前。
私は緊張で吐きそうな感覚を味わっていた。
「教室に入る前に深呼吸しよっか!」
そんな私を察して、華恋ちゃんが提案する。
「そうだね…」
私は大きく息を吸い込む。
「何かあっても、俺たちが守ってあげるよ!」
織川くんが笑顔で言う。
「ありがとう…!」
それだけでも涙が出そうだった。
「ねー?清ちゃん?」
さっきまで、ぼーっとしてた織海くんに織川くんが聞く。
「……ああ、そうだなっ…」
織海くんは笑う。
「あたし今日日直だから、先教室入るね!」
「あ!俺、宿題やってねーや!」
そう言って、二人は教室に入って行く。
織海くんと二人、廊下に残された。
そして…
「俺、力でねじ伏せるの得意だから
なんかあったら言えよ?
そいつらぶん殴ってやるよ!」
「な、殴るの?…」
「あー………」
それはダメか…と呟きながら頭をかく。
可愛いな、と思うけど
男の子に言ったら怒られちゃうよね?
「とっ、とにかく!
俺が守ってやる………!」
拳をトン…と、私のおでこにくっつける。
その拳から、力が伝わるみたい…
そしてなぜだか…
ドキドキ…ドキドキ…、と
心臓が跳ね上がる。
「痛いっ!」
そのまま、織海くんはおでこにデコピンした。
「ちょっ、なにするんですかぁっ!」
そのデコピンが結構痛くて
私はおでこを抑える、
久しぶりのデコピンに涙目になってしまう。
「あ、…いや………
緊張してるかなーと思って…」
また、頭をかく仕草。
これは、お礼を言うべきだよね?
「あ…ありがと!」
笑う、精一杯の笑顔。
織海くんに届いて欲しい…
「っ…………お前は、笑顔が一番だな!」
織海くんはニカッと笑う。
それは茶色の髪よりも
耳たぶについた銀のピアスよりも
きっと太陽よりも輝いていた。
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