彼女の世界が変わらぬ理由
何だかとても申し訳ない気持ちになってきた。
こんな絵を。
良い絵だなんて、言ってもらえるような価値などない絵を。
安東は好きだと。
そんな風に思わせてしまったことが、マリアはつらかった。
「マリアちゃん…お願い。一枚だけでもいいの。一枚だけ、今描いている絵だけでいいから、あたしにちょうだい?」
「…ごめんなさい。あげられないわ」
「マリアちゃん…」
「………でも、違う絵なら」
そう呟くと、安東は顔を上げて目を見開いた。
「この絵じゃない、違う絵を最後に描くわ。それなら、あなたにあげる」
「ほ、本当?」
「約束するわ」
安東はしばらくポカンとしていた。
それはそうだろう。
柚木マリアが『違う絵』を描くと言ったのだから。
前代未聞の話だ。