彼女の世界が変わらぬ理由
「すぐには決められないや~。ゆっくり考えて、決めてもいい?」
「いいよ。あまり期待しないでね」
この絵以外、きちんと描けるのかもわからないから。
そう言うと、安東は嬉しそうに笑って頷いた。
彼女には、涙より笑顔が似合う。
安東を笑顔にしてあげられることが、嬉しかった。
マリアは描き途中の絵を眺め、これまでの自分の絵と向き合っていた自分を思い起こし、不思議な気持ちになった。
「絵をやめたら…あたしは何をするんだろう」
「マリアちゃん…」
絵をやめるということは、マリアにとって過去と決別するのと同じこと。
過去と決別した途端、歩いていく道をも失う気かした。
「大丈夫だよ」
「え?」
「マリアちゃんには、楽しいことが、た~っくさん待ってるから!」
断言する安東。
マリアは彼女の笑顔に、なぜだか安堵した。
できるなら、最後の絵は、安東の笑顔を描きたいと思った。