彼女の世界が変わらぬ理由
彼方の色
--
----
桜は散りつくし、大学の広い敷地が新緑であふれる初夏。
森山十夜は学生科に向かうべく、エントランスに足を踏み入れた。
大学に来るのは久しぶりのことだ。
最後に来たのは、去年の冬。
事故が起きる、前だった。
学生科に向かうまでの窓からは、外の芝生の上でスケッチをしている学生が数人見える。
十夜の右手が疼く。
それには気づかないフリをして、十夜は薄っぺらい鞄を持つ左手に力を込めた。
この鞄には、ただ紙が一枚入っているだけだ。
退学届け。
十夜は今日で、大学を辞めるつもりで来た。
「あ! 森山~!」
学生科を目前にした十夜を、誰かが大声で呼び止める。
振り返ると、同じ油彩科の久米がこちらに走ってきていた。
金髪のサルのような頭が眩しい。
「よっ、久しぶり! もういいのか?」
久米の嬉しそうな顔に、十夜は言葉を詰まらせた。
----
桜は散りつくし、大学の広い敷地が新緑であふれる初夏。
森山十夜は学生科に向かうべく、エントランスに足を踏み入れた。
大学に来るのは久しぶりのことだ。
最後に来たのは、去年の冬。
事故が起きる、前だった。
学生科に向かうまでの窓からは、外の芝生の上でスケッチをしている学生が数人見える。
十夜の右手が疼く。
それには気づかないフリをして、十夜は薄っぺらい鞄を持つ左手に力を込めた。
この鞄には、ただ紙が一枚入っているだけだ。
退学届け。
十夜は今日で、大学を辞めるつもりで来た。
「あ! 森山~!」
学生科を目前にした十夜を、誰かが大声で呼び止める。
振り返ると、同じ油彩科の久米がこちらに走ってきていた。
金髪のサルのような頭が眩しい。
「よっ、久しぶり! もういいのか?」
久米の嬉しそうな顔に、十夜は言葉を詰まらせた。