Bitter Sweet
「そりゃ・・・、蓮と離れるなんて考えたことないけど。でも、わかんないじゃない。人生、何が起こるか。蓮に、私よりもっと好きな人出来ちゃったりするかもしんないし。…だから、付き合いを公言しちゃうのはハイリスクかなって。」

……。

出た。ひかりのマイナス思考。
オレは、開いた口がふさがらなくなりそうだった。

仕事とか、普段は強気なのに、時折見せるこの弱弱しさは何なんだろう。

バシャ、と水音を立たせて、オレはひかりを後ろからギュッと強く抱き寄せた。

ひかりのつむじにオレの顎をぐりぐり押し当てながら、オレは言った。

「あのさ。オレ、言ったことなかった?オレはひかりだけ傍にいてくれればいい、って。その気持ちに変わりはないし、これからも変わらないよ。ひかりがオレにベタボレなら尚更。
そもそも離す気なんてねーし。」

「……。」

「だって、オレ、思い描けるよ。ひかりが隣にいて、いつか可愛い子供とか生まれて賑やかな家族になってさ。じーちゃんばーちゃんになっても、こうして手を繋いでる姿。」

キュッと湯船の中でひかりの手を握る。

「ひかりはそういうの、想像できねーの?」

繋ぐ手に力が入るのを感じる。
そして、消え入りそうな声が吐き出されるのが聴こえた。

「……バカ。」

「は?」

「なんでそんなこと、こんなお風呂の中で言うのよ…。」

心なしか、ひかりの声は震えていた。

肩越しに彼女の顔を覗き込むと、瞳に溜まっている熱が見える。
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