Bitter Sweet
心臓が痛いくらいに、早鐘を打っていた。

でも、それをどうにか押し殺したくて、
本当は泣きそうだったのに無理矢理笑顔を作った。

「…っ、そう、想ってくれてたんだ。」



やば。声、震えた。

「…ひかり。」

呼ばれたけど、振り向けない。

何?、と声だけで返事をした。

「こっち見て。」

きゅ、と指先を握られる。

ハッとして前をみると苦しそうに歪む昂くんの顔があった。

「昂くん…。」

「ごめんな。傷つけたくなんか、なかったのに。」

ーなんで今、謝るの。

あの頃はそれでも納得して別れたんだよ?

別れの時、

昂くんは電話ごしに何度も。

『ごめん。』

そう繰り返してた。




「…後悔、してたの?だから、今もまたそうやって謝るの?」

ポロッと、我慢してた涙が一雫、落ちた。

「私だって、必死に忘れようと頑張ってたよ。でも、そんな簡単に忘れられるワケないよね、だって…。」

だって。

初めてのヒトだもん。

その言葉はグッと飲み込んで、続けた。


「高校時代の思い出、ほとんど昂くんなんだから。」

色んな感情がごちゃ混ぜになってきて、強めの口調になってしまう。

「…自分からお前手放したのに、勝手だよな。本当、今謝ったって、単なる俺の自己満足だよな…。」

はぁ、と、何言ってんだろ俺、とため息を吐いている。


「…あの頃、照れ臭くてあんまり言えなかったけどさ。俺、ひかりのこと本当に好きだったよ。」


ギュッと心臓、鷲掴みにされたみたいに、痛い。

好きだったよ、

過去形のその言葉が。

とろけそうな甘さを含んで聴こえてしまって。

何も言えなくて、ただじっと昂くんを見つめた。

そして、思わず私も呟いていた。


「私も、大好きだったよ。昂くんのこと…。」









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