甘い香りを待ち侘びて
ソファーの前のローテーブルには、クリスマスケーキとオードブル、それからコーンスープとサラダが並ぶ。
本当は全部、明日ヒロくんと食べるために用意しておいたもの。だけど予定が狂ったので今出している状況だ。
早めに準備しておいて良かった。ほとんど買ったものだから大したことはしてないけれど……。
クリスマスケーキはもちろん、ヒロくんが作ってきてくれたもの。手に何も持っていないのかと思っていたら、廊下の床に置いてあった。
いくら箱に入っているとは言え食べ物を下に置いて欲しくなかったけど、待ってくれていたことだしここは大目に見ておこう。
「すごい食べっぷりだね」
「え、そうか?」
もはやスープをお皿からがぶ飲みする姿を見て呆気にとられてしまう。
たぶん、お腹空いてたんだろうな。夕食時も働いてただろうし、そのあとはずっと待っててくれていたし。
オードブルのおかずも多めに用意しておいたけれど、パクパクとあっという間にヒロくんの胃の中に吸い込まれてしまった。
わたしはちびちびとコーンスープを飲みながらサラダをつつく。
しばらく見ているとヒロくんは満足したらしく、おかずを摘まむ手を止めた。
「なんか、俺ばっかが食っててわりぃな」
「ううん、いいの。ヒロくんお腹空いてるみたいだし、食べてていいよ」
「いや、そろそろケーキ食おうぜ。ここに出しっぱなしだと溶けるだろうし」
ケーキはまだ箱に入ったままそこにあった。だから今年はヒロくんがどんなケーキを用意してくれたのかは、まだお楽しみのままだ。