甘い香りを待ち侘びて


 パコッと開く蓋。
 そしてその下から姿を現したものに、わたしは大きく目を見開いた。


「これ……」


 それは指輪だった。でもただの指輪じゃない。シルバーのリングの上には真っ赤なハートの小さな飾りが付いている。
 しかもたぶん、この飾りは……。


「これもアメ細工で作ったんだ。エリへの気持ちを込めて」


 ヒロくんはそっと箱から指輪を取り出す。そしてわたしの左手を持つと、何の躊躇いもなく薬指にそれをはめた。
 驚きと嬉しさから来るドキドキという心音が、とても心地良かった。



「結婚しようか、エリ」



 目が合うと、甘さが漂う表情でそう言われた。瞬間、わたしの顔には嬉し涙が伝う。
 それがわたしの答えだった。


「うん……!」


 顔を涙でぐちゃぐちゃにさせながら、何度も深く頷いた。ヒロくんはクスクスと嬉しそうに笑っている。


「泣きすぎだよ」

「だって、プロポーズされるとは思ってなかったから……」


 ただ、クリスマスに会えたらなと。二人で過ごす甘いクリスマスの理想ばかり思い浮かべていた。

 だけど今年の現実はヒロくんが会いに来てくれただけでなく、こんなにも素敵なサプライズまで用意してくれいた。

 サンタさんの代わりに来てくれたのは、待ち焦がれていたヒロくん。
 そして持って来てくれたのは、甘い香りがする約束の証。


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