婚恋
大きな賭け・・・・陸編

百恵との出会い

「もしもし陸君?」
「はい。」
電話は俺と春姫の担当である藤田さんからだった。
夜に装飾花の搬入があり春姫とその両親そして・・・松田と藤堂が
来ると聞いていた。
そこにいる春姫以外の人にどうしても聞いてもらいたい話があった。
なので、藤田さんに頼んで春姫を早めに帰すようお願いをしていた。
藤田さんから春姫が帰ったと聞いた俺は式場へと向った。

俺の本心を・・・聞いてもらうために・・・

百恵と出会ったのは会社の先輩に無理やり参加させられた
合コンだった。

多分俺以外の人は百恵の事をかわいらしい声とお嬢様っぽい服装で
男受けするイメージを持っていたと思うが
俺が初めて会った時の百恵はそんな感じは一つもしなかった。
どちらかというと合コンなんか参加したくないというオーラが
全身から現れている感じだった。
そんな百恵と目が合った。
決して近い場所ではなかったが目が合った。

普通ならここで運命を感じたとか
恋愛に発展したって展開を期待するのだろうが
俺達の場合そういった事は一切なかった。

自慢するわけではないが黙って酒を飲んでても
周りの女からいろいろと話しかけられる。
彼女はいるのかとか趣味は何かとか
少しでも自分との共通点を見つけようと必死な女の相手は
正直面倒臭い。

それは百恵も同じ様だった。
先輩なんか必死にアピールしてるのに
百恵はそれをそっけない態度で答えてる姿が
少し離れた場所にいた俺にもわかったほどだ。
まるで自分を見ている様だった。

俺がつまらなさそうに話すから、脈がないと感じた
女たちは早々に俺から離れていった。
時々先輩から「もっと愛想よくしろよ!」と言われるが
別にこんなところで彼女を作りたいとか思ってないし
俺の中には一人の女しかうつっていないから
適当に返事をすると
先輩もそれ以上の事は言わなかった。

店員からラストオーダーと告げられ
みんながいっせいに最後の飲み物をオーダーしている時に
俺は席を立った。
喫煙所で煙草を吸っていた。
途中で消えられない様にと会費は清算前に回収といわれていた
為帰れない事を思いだした。
「あ~~面倒くせ~~早く帰りて~~」
「・・私も」
独り言に誰かが賛同していることにびっくりして横を見ると
そこには百恵がいた。

「あなた、面倒臭そうに飲んでたわね」
「そういうあんたも・・だろ?」
百恵はフッと笑った。

「ねえ・・この後一緒に飲まない?」
面倒くさいと言いながらも一緒に飲まない?なんて誘うなんて
こいつは策士かと思った。
「はっきり言うけど下心なんかさらさらないから・・・安心して」
それは男の台詞じゃないか?
口をポカンと開けたまま百恵を見つめてしまった。
「どうすんの?飲むの飲まないの?」
「飲む・・・・」
なぜか即答していた。

合コンの後、俺と百恵はそれぞれの誘いをうまくかわし
別の居酒屋で飲み直していた。

合コンの時と打って変わって
百恵は物凄いピッチで飲み始めた。
驚いたことにかなりの酒豪らしい
顔色一つ変えずに飲む百恵の姿に感心するほどだった。

そんな百恵が生中を4杯ほど飲んだ頃
とんでもない頼みを持ちかけてきた。 
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