婚恋

偽彼氏と偽彼女?


「ね?お願い。あなただったらきっと・・・有村さんも・・・だから
彼氏のふりしてくれない?これでもし・・・あの人が何も反応を示したり
しなかったら私・・・その時は諦める。彼の事諦める・・だからお願い。
少しの間だけ彼氏のふりをして!お願い」
はっきり言って目が点になる様なお願いだった。
出会いってまだ数時間しか経ってないのに
いきなり彼氏のふりをしてくれって・・・


百恵には高校の時からずっと想いを寄せている男性がいた。
百恵の2つ上の先輩で有村とかいう男だ。
その男に告白をして振られたらしい。
しかも2回も告白をして共に全敗。
普通なら諦めるんだろうけど、百恵に諦めると言う言葉はなかったらしい。

どこからそんなパワーが出てくるのだろう。
スタイルだって悪くないし、さっきの合コンの様子を見ていればわかるが
結構もてるタイプだと思う。

それでも全敗するってどんな理由なんだ?
「引き受ける受けないはちょっと置いといてー・・・振られた理由は何?」
百恵は口をとがらせながら不服そうな目で俺を見た。
「・・・・妹にしか見れないんだって!最悪じゃん!妹って言い方って
遠まわしに絶対ない!って言われてる様なもの。・・・でも
どんなに諦めようとしても諦められないの。好きで好きで!・・・あんたにわかる?
私のこの胸を抉られる様な気持ち・・・」

胸を抉られる様な気持ち・・・あるに決まってるじゃねえか!
って叫びたい気持ちをぐっと堪えて「ある」とだけ・・・呟くように言った。
百恵はそんな俺の言葉を聞き逃さなかった。
「あるって・・・あんたもそう言う片想いの相手がいるんだ・・・」
意外そうな顔でまじまじと顔を見られ思わず生中のジョッキを一気飲みした。
「・・・いるよ。いるけど・・・あんたって言い方はないだろ?仮にも彼氏役を
頼んでる相手だぞ!俺の名前は椎名陸。あんたは?」
「百恵…百恵でいいよ。どうせ今日から陸は私の彼氏役なんだからさ」
口角をぐーっとあげた百恵の顔が憎たらしかった。
「おい!俺はまだやるとはー」
だが百恵のトークは止まらない。
「もう!いいじゃない。ね?…そ!そうだ。ね!さっき陸も片想い中みたいなこと
言ってたでしょ?・・・・私もその彼女の前では陸の彼女のふりしてあげる。
もし陸の事が気になるなら何らかの動きが出るかもよ・・・
運が良けりゃ~振り向いてもらえる。・・・かもよ」

全部仮定のはなしじゃないか。
しかしとんでもない女にひっかかった・・・。

百恵はどうだか知らないが、俺の場合、春姫には相当ダメ男だと思われてる。
・・・思われても仕方がないか・・・
高校時代は恋愛処理班なる事をやってもらい
大学時代も女にはだらしなく見られてた。
あの頃の俺って来るもの拒まずだったしな・・・
そしてあいつの結婚がダメになった時にいきなりキスしちゃって
・・・・考えただけでも恐ろしい。
百恵に偽の彼女役になってもらったとしても
よかったねって一言で終わりそうだ・・・・
「陸?」
「は?」
「は?じゃないの。お願い!」
「・・・彼氏役って・・・何すればいいんだよ。」
すると百恵の口角だ最大まで上がった。
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