婚恋

第一関門

どんな理由で1カ月後に打ち合わせと言ったのかよくわからなかった。
だが、1カ月ぶりにあった百恵はめちゃくちゃ綺麗になった様に思えた。
恋の力は恐ろしい。

「な・・なんか綺麗になったな・・」
「え?本当?幸せだもんね♪」
堂々とのろけられると何だか突っ込むのもどうでもよくなる。

だがそんな話はここでお終い。
打ち合わせという事で会っているのだが
はっきり言って今日は打ち合わせではなく
決定事項を聞いているだけだった。

話の内容は春姫と結婚するための準備と言ってもいい。
ただ結婚する相手の名前が百恵と言うだけの事だ。
百恵は俺と春姫の結婚を想定して話をしている。
彼女不在で結婚式の話など前代未聞だ。
しかも主役の花嫁はなーんにも知らないんだもんな~~。

毎回思うが、ほんとにこれってありなのか?って思うのだが
ここまできてそれ言ったら百恵に何を言われるか
そう思いながら話を聞いた。

「これから言う事をちゃんとやってほしいんだけど・・・
 最終確認ね!・・・春姫ちゃんのこと本当に愛してる?」
「愛してるって・・・ええ?」
「ええ?ってそれこっちの台詞なんですけど・・・はぁ?」
「愛してるよ!・・・んじゃなきゃこんなむちゃくちゃな事
 やらねぇ~よ。」
百恵はフッと笑うと直ぐ真面目な顔に戻った。
そして・・・
「招待するゲストのリストアップをするんだけどね・・・
 春姫ちゃんのご両親欠席での結婚式はね~~。
 それに陸の両親にも一芝居打ってもらわないとこれ
話が進まないわけよ。」
確かにそうだ。
俺が結婚するって事は双方の両親の出席は必須だ。
って事はだよ・・・・
・・・・こりゃ大ごとかも
今頃気づく俺も相当バカだわ。
「でね、陸には地盤作りをしてほしい訳よ。」
「地盤?」
「そう。まずは自分の両親に事の経緯を全て話をして理解してもらう。
それから春姫ちゃんの両親にも陸の春姫ちゃんへの思いと
この作戦の内容を説明する。それが出来なきゃ結婚式そのものも
キャンセルだから・・・・頑張ってね」
おいおい頑張ってねってそう簡単に事が進む内容じゃねーだろ!
「あれー?もうびびちゃった?あんたね、少女マンガじゃあるまいし、
2人だけが良ければいいなんて事はないの。双方の親を説得したら
次のステップへ進むから了承を得たら連絡ちょうーだい。」
「連絡って・・・俺一人でやるんだよな」
「他に誰がいるのよ。」
「でもさ、この計画だと百恵との結婚をドタキャンされたってって設定だろう?
ドタキャンの理由って何か考えあるの?それも説明しないとまずいんじゃないか」
すると百恵は俺の目の前に指を3本出した。
「なんだ?それ・・・」
百恵は口を尖らせながら「3ヶ月ってことよ。」
その3ヶ月の意味すらわからなかった。
「私が陸以外の人といい関係になって妊娠しちゃうの。」
「・・・また凄い理由を考えたよな。」
「まあね。これ今朝考えたのよ。なかなかのナイスアイデアでしょ!
でも本当にそうなったりして。エヘヘ」
嫌みなくらいの幸せオーラに俺はそれ以上の事を口には出さなかった。


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あ~~疲れた。
何とか親に了解を得る事が出来たが
さすが俺の親だけあって変わってるよな~~
お袋何かドラマみたいで面白そうだとか言いだすし
親父は親父で春姫のファンだからこのまま
本当の夫婦にならないと許さないとか
絶対におかしすぎると思ったが

この先この2人にも協力してもらう事になるのだから
感謝しなきゃな。
問題は春姫の両親だよな・・・・・
こんな話したらなんて言うか・・・
春姫のご両親とは俺が高校生の時からいろいろと世話になった。
とても仲の良い素敵な夫婦で、俺の理想でもあった。

だけど理想だからとか世話になったからというだけで
今回の話を了承してくれるとは思えなかった。
春姫のドタキャンがあったから、より慎重になってるかもしれない。
俺の春姫への思いがご両親に伝わるだろうか・・・・
不安を隠せなかった。
 
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