婚恋

わからない思い



え?これが・・・私?
鏡に映った私の姿に自分で驚いてた。
「よく化けれたもんね・・・」
ぼそっとつぶやいた言葉がヘアメイクさんに聞こえたらしく
鏡越しに目が合うとけらけらと笑いだした。
あれ?そんなに私って変な事言ったかな?
首をかしげると
「もう~~春姫さん花嫁さんがそんな事言っちゃだめじゃないですか。
土台はとてもいいんですよ。もっと自信を持ってください。
本当にお綺麗ですよ。きっと新郎様も惚れ直しちゃいますよ」

「ありがとうございます」
そして最後にさっき母からもらったイヤリングをつけた。

気がつけば部屋にはヘアメイクさんと私だけだった。
母は親戚のあいさつまわりだとか何とか言って出て言ったし
藤田さんはそれこそ式全体を見なきゃいけないので
ここにずっといる訳でもなく・・・・

ヘアメイクさんも片づけを済ませ席を外した。

誰もいなくなった部屋に一人・・・なんだか取り残された様な
気分だ。
一人でいると余計な事を考えちゃうし、
でもあまり動くなって言われてるし・・・

そういえば・・・陸に会ってない。
自分の事ばかりで陸の事をすっかり忘れていた。
するとノックの音が聞こえた。
「はい」
「俺だけど・・・はいっていい?」
声の主は・・・陸だった。
「うん・・・・」
ゆっくりとドアが開くと陸はその場で立ち止まっていた。
「何そんなとこで止まってるの?さっさと入ればいいじゃない。」
考えてみたらなんだか久しぶりな感じがした。
最後に会った日は最悪な別れ方をしたんだった。
みんな私の我儘なんだって・・・わかっているのに

自分の思いが陸に届かないから・・・
陸には八つ当たりみたいに接していた。
でも・・ここまで来たら・・・ちゃんとしなきゃね・・・
そう思って陸を見るが陸の視線はまるで泳いでいる様だった。
「どうしたの?体調でも悪いの?」
陸は首を横に振るだけだった。
「じゃあ・・・どうしたの?何か問題でも?」
「・・・・ずるいよ」
「え?」何がずるいって?
そう思いながら陸を見つめると陸の顔が徐々に赤みを増していく
「・・・・・綺麗だ・・・凄く・・綺麗で・・・」
「あ・・・あり・・がとう」
思ってもいない言葉にお礼もたどたどしくなる。
恥ずかしさのあまり私まで顔が赤くなる。
「あのさ・・・実は、ちょっと変更があるんだ。式の事で・・・」
「変更?」
「あー。でも・・・その・・・式とかに大きな影響は多分ないだろうから
・・・・あまり気にしないでって言うか・・・と・・とにかくそういう事」
よくわからに説明にとりあえず返事だけしておけばいいと思い。
はいとだけ言った。

そして陸は言いたい事だけ言うと部屋を出て行こうとした。
そんな陸を見て私は名前を呼んでいた。
どうして呼んだのか理由はよくわからない。
だけど・・・陸は
「ごめん・・・これ以上一緒にいたら俺自分を押さえられないから」
そういって部屋を出て行った。
私は胸に手を当て高鳴る鼓動を鎮めようと必死だった。

それからしばらく経った頃
藤田さんから
「そろそろ時間なので・・・」
私は自分の作ったブーケを持つと藤田さんと共に式場へと向った。 
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