Always
恵は僕と目をあわせると、
「――好きな女の手を、離しちまったんだろ?」
と、言った。

「――ッ…」

僕は、目を伏せた。

頭のいい恵に隠し事は通用しない。

恵はやっぱりと唇を動かして呟いた後、
「幼なじみの勘と言えばそれまでかも知れねーけど…な」

ハハッと笑った。

「手を離しちまったけど…まだ、好きなんだろ?

まだ、その手の主のことを思っているんだろ?」

恵の質問に、答える代わりに僕は首を縦に振ってうなずいた。

「じゃあ、もう1度その手を繋いでこい」
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