ハリネズミの恋
“わたしは氷室くんとなんかつきあっていない”

“氷室くんが勝手にやっているだけだから、わたしは関係ない”

…その時のみんなの顔――特に氷室くんの顔が、忘れられなかった。

眼鏡越しから見つめる悲しい瞳と目があったとたん、わたし…なんてことをしたんだろうって気づかされた。

氷室くんは幼なじみで、友達がいないわたしの唯一の友達で。

どんな時でも氷室くんはわたしを助けてくれて、守ってくれて…わたし、それに気づかなかった。

ただそれが当たり前みたいに思ってて、気づかなかった。

その友達を、わたしが傷つけて…。

それ以来、わたしと氷室くんは一言も口を利かなくなった。

中学1年生の終わり頃にお父さんが仕事の関係で地方へ転勤することになって、それを利用してわたしは氷室くんから逃げた。

もう2度と彼には会わないって、そう誓った。

 * * *
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