龍神様との恋愛事情!

大きさや長さにも驚いたけれど、何より私が目を奪われたのは美しさだった。

怖かったらどうしようなんて考えてたけど、とんでもない。

とても穏やかな漆黒の瞳に、憤怒の形相とは程遠い優美な顔つき。

西洋の絵画とかは悪魔のような龍がよく描かれているけど、千早様はその神々しさたるや、まさに神様――龍神様だった。


「沙織。沙織?聞いているかい?」


ポケッと見惚れていた私は千早様に呼び掛けられても、少しの間気づかなかった。


「沙織ちゃん」


「へっ!?」


おばあちゃんに呼ばれて我に返る。


「千早様が呼んでるわよ」


「あっ!はい、何でしょうか!」


「私の手に乗っておくれ。香織も一緒にね」


龍の姿でも千早様の声はハッキリと聞き取れた。

人間の姿の時と同じ、甘くて優しい響きを含んだ声に安心する。


< 184 / 564 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop