龍神様との恋愛事情!
大きさや長さにも驚いたけれど、何より私が目を奪われたのは美しさだった。
怖かったらどうしようなんて考えてたけど、とんでもない。
とても穏やかな漆黒の瞳に、憤怒の形相とは程遠い優美な顔つき。
西洋の絵画とかは悪魔のような龍がよく描かれているけど、千早様はその神々しさたるや、まさに神様――龍神様だった。
「沙織。沙織?聞いているかい?」
ポケッと見惚れていた私は千早様に呼び掛けられても、少しの間気づかなかった。
「沙織ちゃん」
「へっ!?」
おばあちゃんに呼ばれて我に返る。
「千早様が呼んでるわよ」
「あっ!はい、何でしょうか!」
「私の手に乗っておくれ。香織も一緒にね」
龍の姿でも千早様の声はハッキリと聞き取れた。
人間の姿の時と同じ、甘くて優しい響きを含んだ声に安心する。