龍神様との恋愛事情!
私はおばあちゃんと一緒に差し出された千早様の手に乗った。
手は割と小さめで、大人二人が収まったら定員オーバーな感じ。
「では」
その一言を合図に、千早様は滑るように飛び始めた。
千早様の背中に羽はない。
だからバサバサという風を切る音はしない。
ひゅんひゅんと風が通り過ぎる音だけが耳を掠める。
私は目の前にある千早様の爪をキュッと握った。
何かに掴まっていないと落ちそうで怖い。
それ程スピードは出てないけど、高さがあるから不安になる。
眼下に見えるのは緑の美しい山脈。
たまに視界に入る長大な生き物は、たぶん他の龍。
千早様に聞いたら、ここではほとんどの龍が本来の姿で暮らしているとか。
人間の姿になる方が稀らしい。