龍神様との恋愛事情!
「ハッ、笑えぬ冗談だな。その程度の思いで俺から沙織を奪おうなど笑止千万」
伊吹様は千早様を睨むと、くるりと背を向け、低いベランダの手摺りに足をかけた。
「お前など、沙織に相応しくない」
そのまま、ふわりと飛び上がる。
少なからず千早様の答えにショックを受けていた私は、連れ去られるというのに声を上げることすらできなかった。
好きになりたいと思うって、何…?
好きなの?
嫌いなの?
どっち?
曖昧過ぎて意味がわからない。
意味がわからなくて、胸が痛いよ。
苦しくて、泣きたいよ。
あの柔らかい微笑みを浮かべて、好きって言って欲しかった。
そうすれば、私だって、素直に叫んでいたかもしれない。
「私も」って…。