龍神様との恋愛事情!
「はぁ…はぁ…」
吹き付ける風。
身体を打つ大粒の雨。
後ろ手に縛られてるせいもあって、私の全力は普段の半分以下だった。
「はぁ…い、ぶき…さま…!」
目指すは塒山神社。
家に戻っても、きっとまた捕まってしまう。
なら、塒山へ!
伊吹様のところへ…!
田んぼの脇道を走って、川へ向かう。
川にかかる小さな橋を渡れば塒山が――。
「待てぇー!!!!」
「戻ってこんかぁ!!」
後ろから村長さん達の声が聞こえる。
もう追いつかれた!?
「はぁ、はぁ」
急がなきゃ!
速く!もっと速く走って!私の足!!
「はぁ!はぁ!」
何度も転びそうになりながらも、ぬかるんだ地面を走った。
けど、村長さん達の声はどんどん大きくなるばかりで…。