龍神様との恋愛事情!
足を解き終えると、彼は言った。
「生きてほしいんだ」
死ねと宣告されたばかりの私にとって、今の彼の一言はひどく心に響いた。
生きてほしい…。
私のことを、そう思ってくれる人もいる…。
「あり、がとう……ありがとうっ…」
「泣くなよ。ほら、次は後ろ向いて」
頷きながら、後ろ手に縛られた腕を彼に向ける。
とその時、扉の傍から怒鳴り声がした。
「誰だ!?勝手に倉へ入るな!」
「やべっ!!父ちゃんだ!」
その通り。
入ってきたのは村長さんだった。
「こ、こら!お前、何やってるんだ!」
「ちっ!仕方ねぇ!」
舌打ちしてから彼は村長さんと取っ組み合いを始めた。
「桜、逃げろ!!走れるだろ!」
「で、でもっ」
「いいから早く行け!走れぇー!!」
彼の努力を無駄にしちゃいけない。
私は立ち上がると倉から飛び出し、雨の中を全力で駆け抜けた。