龍神様との恋愛事情!
「やっと来てくれたんだね、沙織…」
社殿の方から龍矢くんじゃない男性の声がした。
………え?
社殿に誰かいる?
「誰だっ!」
龍矢くんが警戒して吠える。
すると、社殿の屋根からふわりと人が舞い下りてきた。
「沙織…」
整った顔立ちに、柔らかい微笑み。
ポニーテール風にアップされた少々癖のある明るい薄茶色の髪。
艶やかな花柄の青い着物をまとった青年。
初めて見る人のはずなのに、どうしてか違和感があった。
「沙織と……ふむ、君は伊吹か」
「なんだお前は。不審者か?」
「不審者とは失礼な。私はチハヤ。漢字はこう書く」
チハヤと名乗った彼は地面にしゃがむと、適当な小石を持って「千早」と書いた。