腕枕で眠らせて*eternal season*



「うーん、やっぱり庭が諦めきれないなあ」


コーヒーを啜りながら、紗和己さんはパンフレットとにらめっこ。


「庭に拘るねえ、紗和己さん」


私はホットミルクをふーふーと冷ましながらパンフレットをパラパラ眺める。


「庭があれば犬も飼えるじゃないですか。子供が欲しいって言ったときに叶えてあげたいし」


「室内犬って手もあるじゃない。って言うか紗和己さん、そこまで考えてるなんて気が早い」


未来の夢を両手いっぱいに抱えて悩む紗和己さんが可笑しくて。
私はホコホコのミルクを啜りながら笑い声をたてる。


そんな私を見て、少し照れながら紗和己さんは口元を綻ばせた。


「なんだか考え出すと止まらなくって。子供と美織さんと僕と、新しい家で色々な体験がしたいなあって思い描いちゃうんです」


キラキラするほどの幸せが滲んでいる笑顔に、私は自分の胸が温かさと新たな高鳴りで満たさていく事に気付く。


「男の子でも女の子でもいい。美織さんと築ける家庭であれば、どんな形でも。僕はそこにいっぱい笑顔を作っていく事が人生の目標なんです」


「………紗和己さん…」


紗和己さんは語って幸せそうな表情に真摯な眼差しを乗せた。

その姿に、隣に座っていた私の腕が自然と彼の頭を抱きしめる。


「……紗和己さん、いっしょに叶えよ、その夢。いっぱいいっぱい、笑顔作ろう」



愛しい。この人が、とても。



「………美織さん…」


紗和己さんの腕も伸ばされ私の背中を優しく抱きしめ返す。



紗和己さん。

私ね、貴方がとても好き。

私との未来を、夢を、語る貴方がとても好き。


ああ、またひとつ。

私の中に新たな想いが芽吹いていく。




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