腕枕で眠らせて*eternal season*





美織さんと出会ってから十年以上が経つと言うのに、僕の恋心は加速することを止めない。


彼女と時を重ねれば重ねるほど愛しさは募り、もっともっとと心が彼女を欲する。


自分でも、そんな情熱に驚くほどに。





美織さんと初めて出会った、あの遠い春の日。

僕は笑ってしまうほどあっさりと恋に堕ちた。


それまで抱いていた『僕に信じる心と希望をくれた少女』への憧れは、この日を境に焦がれる情熱へと変わった。



今でも鮮烈に覚えている。初めて美織さんを目にした時のことを。


歩道に面したカフェの窓際。待ち合わせに向かっていた僕は外からその窓際に座っていた女性を見て、それが『鈴原美織』さんだと一目で確信した。



彼女からもらったストラップ。ホームページで見たサンキャッチャー。

彼女は、彼女の紡ぐ優しくて儚い硝子にとても似ていると、思った。



そしてその直感は、彼女を知れば知るほど確信になってゆき、同時に恋心を激しく募らせる。



透き通った心。

偽りなく誰かの幸せを願え、傷付き震えていても僕にすべてを見せてくれた。

素直に笑ってくれる笑顔が眩しくて。

優しく、そしてどこか甘く、彼女は光を映すように煌めいていた。



愛しくて。愛しくて。



少女のようなあどけない笑顔が愛しい。

純粋さと甘さを湛えた瞳が綻ぶたび、僕の胸は焦がれていって。

ふわふわと柔らかい髪に、すべらかな白い肌に、壊れそうなほど華奢な肩に、触れたくてたまらなくなる。



今まで、恋愛をしてこなかった訳じゃない。けれど、こんなにも深く激しい想いを抱くのは初めての事だった。




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