腕枕で眠らせて*eternal season*
バカだ。バカだ。分かってる。
公香とつまらない時間を過ごせば過ごすほど、思い出すのは美織の事ばかりだった。
毎日、俺が部屋に来るのを待ちわびてた美織。
コンビニのプリンみたいなつまらないお土産にも喜んでくれて。
そう言えば、アイツは人の悪口を言わない女だったよな 。
別に人を憎まないとか聖人面してたワケじゃないけど、多分、俺の前でそういう話をする事が怖かったんだと思う。
汚い自分を見せて嫌われるのが怖くって。
バカだな。たまには吐き出せば良かったのに。それでいっつも溜め込んじゃって悩んで落ち込んで…
………そっか。
いつも我慢してたんだ。
俺に嫌われたくなくて、落ち込むほど感情を抑え込んで。
――そんな美織があの日初めてぶつけた激しい感情。
……どれほど辛かったんだろう。
あの美織が悲しみを抑えきれず叫んだんだ。
限界、だったんだ。
どうしてその事に俺はあの日気付かなかったんだろう。
…あの時俺は
なんて声を掛けてやったんだっけ。
「ねー楷斗ぉ」
「なに?」
「今度旅行いかない?最近退屈じゃん。どっかパーっとさ、遊びにいこうよ」
「だな。どっか行こう」
スマホから視線を上げずそう言った公香に答えながら、俺はこの関係がもう長くはないな、と頭の隅っこで考えていた。