腕枕で眠らせて*eternal season*
あまりにも意固地な私は自分でもビックリするくらい可愛くなくって。
そんな私を、紗和己さんは呆れてるんじゃないかと思い始めたら、なんだかますます声が掛けられなくなって。
泣きたくなった気持ちでする旅は、どんな景色も感動も心に入ってくる筈もなく。
異常に長く感じられた空の旅が終わって、待望のインスブルック空港に着いた時でさえ、私の顔は俯いて雄大なアルプス山脈の景観さえ目に入らない。
飛行機の中でのやりとりで、下手に気遣わない方がいいと思ったのか。それともこんな私にいい加減怒っているのだろうか。
紗和己さんももう必要最低限の事しか私に話し掛けてはこなかった。
「クリスタルギャラリー、行きますか?」
「……ん、」
ホテルに荷物を置いた後、予定通りに行くか紗和己さんが確認してくる。
…こんな気持ちで行っちゃっていいんだろうか。
あんなに楽しみにしてたのに。素敵な思い出にする予定だったのに。
そんな気持ちのまましょんぼりと歩く私の姿は、とても新婚旅行に来た幸せな新妻には見えなかったと思う。
……謝ろう。
謝りたい。仲直りしたい。
ギャラリーに着いても、その事ばかりで頭がいっぱいになりながら俯いていた。
「美織さん」
あまりに頭がいっぱい過ぎて、呼ばれた事にすぐ気付かなかった。
「美織さん」
もう一度呼び掛けられ…
突然ぎゅっと、手を握られた。
ビックリして顔を上げると、隣に立つ紗和己さんは真っ直ぐ正面を見ていて。
その視線を追った先に、見事な煌めきを放つクリスタルのシャンデリアが見えた。
「…あっ…!これ、前に紗和己さんが写真で送ってくれたやつだ!」
思わず、声が零れた。
――まだ、私と紗和己さんが付き合う前。
オーストリアに出張に行った紗和己さんが、私にいっぱい送ってくれた旅先からの写真の一枚。
綺麗で、嬉しくて、パソコンのデスクトップに飾って何度も眺めた。
「…やっと、美織さんと見ることが出来ました」
輝きに目を奪われてる私に、紗和己さんが微笑んで言った。