揺れる恋 めぐる愛
その指先が……

丁寧に肌の上を滑り、熱をあちこちにふりまいていく。

細く力強い指が、肩に、鎖骨に、背中に、太ももにくまなく……

その後を濡れた唇が追いかけ、躰に炎を灯す。


「んんっ、んっ、んっ、ぁぁあっ」


彷徨う指と唇に、ゆっくりと翻弄され始める。

じわじわと湧き上がる欲情と、愛おしさが溢れる不思議なこの感覚は……

先輩だけがくれるモノ。

壁の薄い部屋で、零れる艶声を押し殺しながら

蕩けるような愛撫に眉を寄せただ感じる。


先輩……

蓮さん……

ア・イ・シ・テ・ル

言葉にできず心で囁いた時、先輩は私の胸に顔を埋めながら

「のの……

ア・イ・シ・テ・ル」

アイシテルの言葉が被った……

気持ちが一気に昂ぶって、

お互いに想いを共有できたことに涙が溢れた……


私の涙に気が付いた先輩が顔を近づけてきて、指で涙を拭う。

「大丈夫だよ……

頑張ってるんだよね?

ののは素敵なののなんだからで……

そのままでいいんだよ……」

揺れる視界の先に、微笑む先輩は、

私にとって神様みたいな人……

こんな人に愛される私は、本当に幸せだ。


明るい光の中、私は久々に先輩の暖かな体に、優しく囁く言葉に、

安心する石鹸の香りに癒された。

そして、私も先輩を包み癒した。


心の奥底にちらちらと見え隠れする、

拭えない違和感を押し隠しながら……
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