揺れる恋 めぐる愛
綺麗な所作をする指先が……

頬に触れた。

顎の下に添えられた親指で、そっと先輩の方に顔を向けられる……

でも強引じゃなくて、あくまでも優しく自然に……


全てにおいて……

そう本当にすべての事において、先輩は私のペースを優先してくれる。

何事も遅い私をゆっくりと待ち、穏やかに包んで癒しながら、

「ののはそのままでいい……

そのままで充分かわいい……」

と優しく囁いてくれる。


その姿勢と甘い言葉に、傷つき弱り果てていた心がどれほど癒され……

安心させられて、励まされたか……

自分に自信がなく、外界の刺激に過敏な反応をしてしまう私にとって、

繰り返し褒められること……

大切な人に言葉で褒めてもらうことで、

私はありのままでいいんだと思えた。


他人にとってはなんでもないことに、いちいち過敏に反応してしまう……

過剰に感じてしまう自分が、

そういった外の世界にあるすべての刺激に

立ち向かう力を持つことができた。


その言の葉を紡ぐ唇がゆっくりと再び重なった……

私は先輩の言の葉の持つ力を……

その深い想いを……

重なる愛おしい唇で、口移しに全て受け取った。


温かい……

胸に温もりが満ちる……

私は……

私のままでいい。

みんなと違っても、みんなのようにできなくっても……

あくまでも先輩の前ではどんな私でも大丈夫。

その想いに涙が自然と零れた。
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