幸せをくれた君に
眩暈がした。


その言葉は〈彼女〉から聞いた言葉そのもの。


俺の記憶は、一瞬にして、あの日へと時を遡る。『ノア』で、美香と再会したあの時へ。










「久しぶりね、美馬さん」


彼女は、父親と社長が席をはずしたのを確認するやいなや、俺との初対面を取りつくろうのをやめた。


「あれから何年たったのかしら」


そんなことを言いながら、彼女は手元のドリンクメニューを見ている。


英語かなんだか分からない言葉で、書かれたそれを手にしていた彼女は、ふと俺を見、眉をひそめた。


「いつまで立ったままで、いるつもり?他の方の邪魔になるわ」


彼女に指摘されるまで、俺は自分のおかれた状況すら把握していなかった。


それほど動揺していたのだ。


「すまない…」





< 51 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop