幸せをくれた君に
完全な八つ当たりでしかないことは、明白だった。意味のない挑発であることも分かっていた。


だけど、俺はそれを誰かのせいにしたかった。


目の前の男のせいに。


「大切なお嬢様に手を出さないで欲しいならば、なんで、あんたは彼女を……」


男は不意に足をとめた。そして、俺を見た。
まるで、俺を軽蔑するかのような冷ややかな眼差し。


「あなたがお嬢様とある契約を結ばれたことは私も知っています。けれど、契約を承知されたのは貴方だ。私の関与することではない」


男の目が俺を射抜く。


「尚、私は黒川様につかえる執事であって、美香様につかえる執事ではない。私の主人は美香様ではないのです」





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